【第2章】人事情報システム導入の進め方 その5
[ 掲載日 ]2013/06/03
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コンサルタント bdchp
- 今回前回に続いて「調達フェーズ」の概略について考えます。今回は3)以降について。
- 【調達フェーズ】
- 1)提案依頼書の作成
2)選定基準の準備
3)提案書の受領・プレゼン/デモの実施
4)ベンダー選定
5)交渉
6)契約の締結 - 第5話 調達フェーズとは何か(後編)
- 本論に入る前に、このフェーズのおおまかなスケジュールについて見てみましょう。 提案依頼書が完成してからベンダーの選定までには、大体7週間程度かかりますので、リードタイムとして考えておいて下さい。 例えば、それによって、プロジェクトの承認やスタートが影響されてしまいますので、注意が必要です。 また予算の承認を得るための社内手続きのリードタイムも必要です。 下記の日程はあくまで目安です。2月1日から起算した場合です。
- 下記の例はうまくいっての話になりますね。
- ・提案依頼通知
起算日(2月1日)
・提案依頼説明会4社
+1週間(2月8日)
・質疑応答期間
+2~3週間(2月8~18日)
・提案書提出
起算日から3~4週間(2月22日)
・1次選定
1週間(2月23~3月2日)
・提案説明会2社
1週間(3月9日)(デモ/プレゼンテーション)
・最終選定
1週間(3月10~11日)
・ベンダー仮決定
(3月11日)
・落選ベンダーに対する説明
(適宜)
・ベンダー価格/条件ネゴ
2週間
・ベンダー契約成立(X日)
(3月25日) - 依頼を行う会社、数社(4社程度が限度です)に通知をし、同日に集まっていただきます。 依頼の趣旨などを説明するため、同じ場で行うことが望ましいのです。 ここでは、日頃のつきあいの程度などは無視して、平等にご説明を行う姿勢が大事です。
- 質疑応答期間は、できれば1社からきた質問は公開にして、質問と回答をセッとにしてメールなどで返信すると良いと思います。 直接出向いてきてじかに質問するベンダーもいるでしょうが、やんわり断る方が良いですね。
- ベンダーは提案依頼に対する作業を行っていますが、人でもコストもかかります。 プロジェクトの規模によっては数百万円も支出することがありますので、お願いをする方も承知して置くことが重要ですね。 この期間は最低でも2週間は欲しいところです。
- 2週間後、書類を受領して事前に設定した基準に従って、2社か3社程度に絞ります。 最終的に何を発注のポイントにするのか、明確にして絞ることが必要です。 提案説明のときにはそこをポイントとしてうけるのですから。
- 【提案書の受領・プレゼン/デモの実施】
- 提案書は書類で受けます。まずは書類で審査をし、プレゼンを受ける最終選考の2社程度に絞り、日時を決めます。 同日にプレゼンを受けた方が良いと思います。また出席者は同じにしなければなりません。 選考する人が別の場合は、妥当性に疑問がでます。
- 気をつけなければならないのは、プレゼンを専門にしているプリセールス担当ではなく、 実際にプロジェクトを行う責任者(プロジェクトマネジャ)にプレゼンテーションを行わせることです。
- デモンストレーションは専門の方にしてもらっても構いませんが、全体説明は実際にプロジェクトを引っ張っていく人にしてもらいます。 提案依頼書には、その旨記述して置かねばなりませんが、立て板に水のような如才ない説明を聞いて感心しても、 実際のプロジェクトは違う人がアサインされ、うまく動かないという例は腐るほどあるからです。
- プロジェクトマネジャには、その経歴から過去にやったプロジェクトや人となりなどを直接質問することができます。 信頼に足る人物かどうか見定めて下さい。パッケージの機能やベンダーのサポートなど重要なポイントはたくさんありますが、 結局は人の問題に行き着くところがこの種の選考の重要なキーです。特に人事システムだからではありませんが、 人事の専門家として試される場でもあるかもしれません。ちょっと皮肉な感じがします。
- プレゼンテーションやデモンストレーションは提案書をベースにお願いする事になりますが、時間は2時間程度が普通ですから、 内容を絞った濃いものにするために、事前にフォーカスを当てる部分を伝えておくことも考えられます。 事前に選考基準は決めますが、ここでは熱意や真摯な姿勢という、ちょっと難しいポイントも絡んでくると思われます。 血の通ったやりとりがあると良いですね。
- 【ベンダー選定】
- ベンダーの選定は、採点を行うべき方々からの基準に対しての評点から行います。 やはり点数化して行いますが、1次選定で書類で2社くらいに絞り、説明会を経て最終的に決めることが良いと思います。 この評点をつける人ですが、実際の現場でオペレーションを行う人が、「使いやすさ」等に重点を置いた評価を行うことが重視される場合がありますが、やりすぎは禁物です。 システムの使い勝手は現在に視点を置くと重要に見えますが、「使い勝手」のような要素は、 慣れてくると大きな意味はなくなります。 従って、事前に基準を決める時の重み付けについては、慎重に検討して下さい。
- 現実的な話になりますが、実際にはすでにどこに発注するかは決まっている事があります。 こういう場合には、関係者に納得感を与えるために、選考基準から評価の与え方までコントロールする場合もあります。 官庁の入札とは異なり、民間の場合は様々な価値観や要素が絡みます。手続きとして行うべきものと割り切り、 システムやベンダーの評価には公正を期すものの、結果については企業として決定するものなので、 個人的な感情や基準に拘るのは,精神衛生上良いないのでやめておきましょう。
- 残念ながら落選した企業には、その事情を説明する機会をぜひとも設けるべきです。 期待をしていてもいなくとも、提案を行った企業は、リソース(人とお金)を使った訳ですから、 サラリーマンであるベンダーの担当者には失注の説明責任があるのです。ここですべてを正直にお話する必要はありません。 それなりに納得頂ける理由を提供することです。提案書の質やプレゼン・デモの担当者がそれなりに熱心にやって頂けたら、 その感謝も率直に伝えることも大事です。ここでの姿勢が、案外どこかで御社の評価に繋がっているかもしれません。
- 【交渉】
- 交渉は、提案された見積書の価格ネゴばかりではありません。 最近では、SLA(Service Level Agreement)と呼ばれる、 成果物であるシステムそのものの出来より、 そこから生み出されるサービスそのもの(パフォーマンス)の保証をするようにという厳しいものまであります。 特にアウトソーシングなどは手段より結果を求めるものなので、そういう契約になるのは頷けます。 実際には「営業対資材」という場で行われることがありますが、「要件定義」が終了して仕様が確定したのち、 最終的な見積を出したいという提案書もあります。
- 当然の事ながら、企業対企業の基本契約書の締結や様々な細かい手続きがありますので、 リードタイムはベンダーの営業と確認して置くことが必要です。プロジェクトのキックオフが迫っていても、 体制が組めないで泣きを見るのは、企画担当者だからです。