「タレントマネジメント」 その1
[ 掲載日 ]2017/07/23
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コンサルタント bdchp
- 「タレントマネジメント」という言葉が「あやしい」とか「煙に捲かれる」等のコメントが様々な場面で見受けられます。 かつて「戦略情報システム(SIS)」というITベンダーのセールスコピーで、かなり業界は信用を失いました。 しかし、いつものことながら、よく調べもしないで巷に流れるキャッチコピーを信じられないという方々が多いので、 それこそ怪しいコンサルタントが跋扈(ばっこ)し始めるのです。
- 「タレントマネジメント」略して「タレマネ」は、新しい「ITワード」のようですが、 実は昔から「人事部門」では当たり前の概念だったと思います。よく調べていただくと分かるのですが、 ユニバーサルな人事管理の黄金律はそう変わるものではありません。我が日本の人事も、「年功序列」「終身雇用」などと時代遅れを指摘されていますが、 本当の「実力主義」が根底に流れていないと、まったくダメダメな会社になってしまうことは、誰も知っている事実でした。 問題は労働組合の存在だと思っているのですが、そこらへんの話は別項に譲りましょう。
- さて、「タレマネ」を分かりやすく説明する努力をしましょうか。 一言でいうと、というと間違いの元になるので、本場の解釈をあげてみますね。
- 米国人材開発協会(ASTD)の2009年定義によると、 「人材の獲得、人材開発、人材配置というプロセスを ビジネスの目標達成に向けて統合的に行うことによって、 企業文化、エンゲージメント、ケイパビリティ、キャパシティを作り上げ、 組織が短期的/長期的な成果をあげることができるように、人材資源を最適化する包括的なアプローチである」 ということになります。
- 何やら難しい言葉が並んでいますが、これは人事管理そのものではありませんか。 確かに、採用や人事異動、社会保険の取得喪失、給与計算という日常業務に忙殺されていて、いつも忙しそうに働いている人事部員にとっては、 「理想だね」という一言で片づけられてしまうような文章です。 だから、特に新しい取り組みでもなく、まともな人事マンは、自らのミッションとして掲げてきた要諦でもあるのです。
- では何が新しいのか? 今回はITに焦点が当たっています。いつもシステムの話になると、 「うちはシステム以前の問題が大きいからなあ」と逃げ腰になってしまう方が多いのですが、今回は同時に考えないと、うまくいかないかもしれません。 なぜって? それは、上に挙げた「ミッション」は、志の高い人事マンは胸に秘めていても、これまでは実現の手段が見つからなかったからです。 もちろん、システムなんか関係なく、人力でも人海戦術でも、または個人の努力に負ってでもやろうとしていた部門や人々はいました。 しかし、「絵に描いた餅」に終わってしまい、徒労に疲れた人事マンは少なからずいたのではないでしょうか。
- 実現の手段が出現したから、シナリオが考えられる、というのが現代の姿だと私は思っているのですが、いかがでしょう。 つまり、要件は企業の人事領域の「ミッション」であり、「ミッション」さえあれば、「タレマネ」の導入を検討することが妥当だということなのです。 「タレマネ」がトップダウンで始めることが多い理由はここにあります。人事部門にとって実現手段がないのに、シナリオを考えることは難しいのです。 次回はそのあたりからお話を進めましょう。