【第2章】人事情報システム導入の進め方 その3
[ 掲載日 ]2013/01/17
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コンサルタント bdchp
- 今回も「企画フェーズ(後編)」について考えます。
- 企画書までに辿り着くまでには次のステップがあるとご案内しましたが、今回は4)から7)までについて考えていきましょう。
- 【企画フェーズ】
- 1)経営目標の確認と方針の明確化
2)現状調査・ベストプラクティスの調査
3)技術要件の調査
4)ニーズの把握
5)システム化範囲の確定
6)費用対効果の検討
7)企画書の作成 - 第3話 企画フェーズの要点(後編)
- 【ニーズの把握】
- ニーズとは情報化に対するものです。このフェーズでは、「新システムの情報化ニーズおよび機能要件を把握し、 プロジェクトの暫定のスコープを明確にする」というテーマと、「業務部門の必要情報を把握し、新システムが使用、管理するデータについて、 プロジェクトの暫定のデータモデルを作成する」という2点が主要なテーマになります。
- 簡単にいうと、何が必要なのかを考えて、どこまでをシステムの範囲にするかを決めることです。 また管理情報の項目を決めていこうというフェーズでもあります。ここでは暫定ながら、システム機能一覧、 データ項目一覧、新システム概念図、新業務フロー、業務改善内容そして年間業務スケジュールを決めていきます。 いわゆる「あるべき姿」を作っていくのだといえます。企画フェーズでは、細かい部分まで想定して作業を進められるわけではありませんので、 目的に従って形でニーズの把握を行わなくてはなりません。
- 【システム化範囲の確定】
- プロジェクトの重要な要素に「システム範囲(スコープ)」があります。 コストや期間を決めるにも、この「スコープ」と呼ばれる範囲が決まらないと、決定できません。
- 通常、システムをパートに分けて優先順位付けやアプローチを定めていきますが、人事情報システムの場合は、 パートといえば「人事」「給与」「福利厚生」とそして「勤怠管理」です。勤怠管理はかなり負荷がかかるシロモノです。 というのも、ほとんどの場合パッケージ固有の機能では対処できず、カスタマイズを伴うため、SI(手作り開発)と同じになるからです。 また、規模が大きいと、優先順位付けをして順次導入していく計画を作りますが、すべてが新システムに移行する前には、 「暫定システム」が必要になる場合もありますので注意が必要です。
- このシステム化範囲の確定の最終的な目的は、新システムの機能や仕様を確定することです。 従って、前フェーズのニーズの把握で行ったものを具体化していくことになります。そしてその場合、 目的とするシステムにどう移行していくかをも考えて置かなくてはなりません。 旧から新にどう移行していくのかが具体的に意識されていないと、当然ギャップがあるためいろいろな問題を抱えることになります。 移行には「データ」と「業務」がありますので2方面から検討して下さい。 また、技術要件の調査で行った制約などが支障になっていないかチェックすることも必要です。
- ここで作成する、いわゆる「あるべき姿」は、あまり斬新的でも妥協しすぎてもいけないという、難しいものです。 企画段階ですから意欲的になるのは当然ですし、かといってあまりすごすぎて現実的でないというのも、困りものです。 次のステップで考えるコストパフォーマンスを逸脱しない範囲で、ベストな形を考えて下さい。
- 【費用対効果の検討】
- さて、企画書でも最も大事な要素のひとつである「費用」について検討します。 まずはじめに整理して置かなくてはならない事に、 この導入プロジェクトの主要な目的が「費用の削減」にあるかどうかを見定めることがあります。
- 当たり前のことですが、「新システムは旧システムより利用評価コストが低くなければならない」といった命題がある場合、 企画担当者の様々な思い入れを取り入れたベストな企画書は難しいかもしれません。 いや、最終的には「アウトソーング」といったかなり思い切った企画になってしまう場合もあります。 ここでは情報システムを作るあるいは導入するというテーマですから、アウトソーシングについては項を譲りますが、ひとつだけ申し上げるとすると、 雇用問題を辞さずという経営者の姿勢があるかどうかが別れ道かもしれません。
- このステップで重要なことは、プロジェクト全体の費用を概算でも目の子でも見積もれるかどうかです。「全体」といったのは理由があって、 多少情報を外に出せば「見積書」を作ってくれるベンダーは沢山います。しかし、本当の費用はパッケージベンダーやシステム開発会社が作る金額リストだけではないのです。 それは、内部の人たちが動く人的費用もありますし、細かいことをいうと移行に関わる費用や暫定的に対処する作業、 教育や業務の組み換え等、目に見えない費用がかなり嵩んでいきます。例えば家を作る場合、不動産広告にある価格だけではなく、 登記費用や引っ越し費用、家具や外構工事などの費用がかかりますね。 車の購入でも本体価格だけでは済まないことはご承知の通りです。 勿論大きいのは開発・導入費用ですけど。
- また業務改善によって得られる想定されるコストダウン効果を、かかる費用の反対に置いてバランスさせるやり方もありますが、これには大きな罠があります。 それは、確実に人員削減をしない限りは、浮いた費用はどっかで費消されてしまうということです。 一番危ないのは、業務要員の負荷を下げるという名目で行うことで、言いにくいことですが残業が生活のためにやっているような場合は、 他の仕事を増やしてしまったり、他業務が割り当てられたりして、評価が難しくなるケースも多々見受けられます。 この場合は、新システム導入後の評価をどう行うかを事前にキチンと決めて置くことが必要です。
- 費用については一時的に発生するコストも、例えば5年間で償却するような期間費用に替えて評価するのが普通です。 保守や運用に関わる費用についても、期間で考えると見落としが少なくなるかもしれません。企画段階でのコストについてはかなり乱暴なものなので、 その点割り引いてみておく必要もあります。そして最も注意すべきなのは、かかる導入費用についての金額の一人歩きです。 よく「ボタンの掛け違え」であとで揉めるのは、「あそこであの金額でできるといったじゃないか」というトラブルです。 覚えがある方が沢山いらっしゃるでしょ?
- 【企画書の作成】
- 企画書は、参考になるモノは巷にありますが、要は自分の言葉で書くことです。 なんとかの火傷といいますが、よく分からないことを格好いいからと企画書に入れてしまって説明ができないと、 企画そのものを疑われてしまいます。大事なのは、
- 「なぜそれをやるのか、効果は何か」
「いくらかかるのか」
「いつまでにできるのか」 - の3点がもっとも大事でこれは結論ですが、その他に
「誰がやるのか」
「どうやってやるのか」
が次に必要な要素です。俗に5W2H(ハウマッチが入ります)といいますが、どこと何は明確ですね。 でもグループ人事だと主体は本社だけではなく関係会社を巻き込むことになりますし、 システム導入ではなくアウトソーシングが解答だとするとWhereやWhoも変わってきますね。